ナショナルジオグラフィック 2013年2月号 生物の毒が、人間を救う

ng2強直性脊椎炎という病気の患者が、バークスコーピオン(北米で有数の毒サソリ)に刺された。抗毒素血清を打ち、一命を取り留めたが、その後強直性脊椎炎による腰痛が改善した、というお話。

人間を殺すこともある毒素は、薬として有益なものがある。

 

  • 例えば、高血圧の治療薬であるACE阻害薬は、1970年代、ブラジルに生息するクサリヘビ科のハララカの毒から開発された。研究者は、バナナ農園の労働者がこのヘビに咬まれると、血圧が急激に下がって気絶することに着目。毒の中から、血圧を下げる成分を突き止め、人間の胃腸の中で分解されないよう改良した後、高血圧治療薬として実用化した。
  • ブラックマンバの毒は、「咬まれたらすぐ棺桶行き」と言われるくらい強力だが、その毒素はこれまでにないくらい強力な鎮痛剤になる可能性を秘めている。
  • アメリカドクトカゲは、1年に3回程度しか食事をとらないが、血糖値はほとんど変わらない。その毒の成分から開発されたエキセナチドという薬が、糖尿病の治療薬として実用化されている。
  • 中東に生息するオブトサソリの毒から見つかった、クロロトキシンという神経毒は、脳腫瘍細胞の表面に結合する性質がある。蛍光色素と結合させることで、癌細胞を容易に見分けることが出来るのではないかと、期待されている。

現在、知られている範囲で、有毒の刺咬動物は10万種、推計される毒素の総数は2000万種類。そのうち、存在が知られている毒素は1万種類、研究が進んでいる毒素は1000種類。まだまだ、莫大な研究の余地が残っている。

何事も、メリットとデメリットがある。
毒でも上手く使うと、薬になる。薬でも使い方を間違えると、毒になる。クスリの反対はリスク。

生物が数億年をかけて、連綿と改良を続けてきた毒素を、逆に治療に使うというのは非常に良いアイデアだと思う。人体に有害な病原体を、逆に予防薬として使用する、ワクチンに似た発想だ。さらに研究が進めば、人命を奪う毒素により、多くの人命が救われることになるだろう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です