日経サイエンス 2013年4月

Scientists_montageまだ中にいる

助け合う知覚

ファージの力

まだ中にいる

1977年に打ち上げられ、2013年現在も運用されているNASAの宇宙探査機、ボイジャー1号。木星・土星を観測した後も飛行を続け、現在は太陽から約180億km、時速約6万kmで太陽系の外へ向かっている。

2012年末にも太陽系外へ出るのではないかと考えられていたが、2013年3月の段階では、まだ恒星間空間ではなく、太陽系内にとどまっている、という話。

2012年8月、ボイジャーが観測した太陽風粒子の数が激減し、太陽系外からの高エネルギー宇宙線粒子が急増した。一見、太陽系外に出たように見えるが、磁場の方向が変化していないため、まだ太陽系内と考えられる。いつ“外”に出るかは、まだ誰にも分からない。

これまで飛行した、どの人工物体よりも遠い場所。光のスピードで往復34時間。宇宙という過酷な環境下で、36年間稼働し続けている。月並みな言い方だが、NASAの技術者は本当に良い仕事をしたと思う。尊敬する。

ちなみに、自分が2年半前に買ったレグザは、2台中2台故障。CANONのデジカメは2年間で修理3回。SONYのミラーレス一眼は2年目で故障。東芝の洗濯機は、2年目で乾燥機能がアウト、3年目で故障。別に手荒く扱っているわけではないのに、この故障率の高さ。36年間動け、とは言わないけれども、もう少し壊れにくくは出来ないものだろうか?

助け合う知覚

人間の感覚機能は大きく分けて5つ、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚。古くから5感と呼ばれている(もちろん、それ以外にも感覚は存在する)。近年の研究によると、上記の感覚はそれぞれ独立しているのではなく、お互い絡み合って働いているようだ。

例えば、

  • 会話の中では、話者の唇が見えていた方が、見えていない場合に比べて発言内容を理解しやすい。
  • 生まれつき目の見えない赤ちゃん(話している人の口元が見えない赤ちゃん)は、平均より会話能力の習得が遅れる。
  • 目の見える人に目隠しをつけると、90分後には視覚野の働きによって、接触刺激に非常に敏感になる。
  • ポテトチップスを食べるときの「パリパリ」が、おいしさの決め手の一つだが、この音を変えて聞かせると味覚まで変わってくる。

などなど。

面白い例に、1976年にマガーク(Harry McGurk)とマクドナルド(John MacDonald)が報告した、「マガーク効果」がある。「ガ」という音を繰り返し発音している人の、“無音ビデオ”を見ながら、同じ人が「バ」と発音している“録音テープ”を聞くと、「ダ」と言っているように聞こえる。これは、目で見た「ガ」が、「バ」という耳で聞こえた音の知覚を変化させたと考えられる。つまり、脳が“見たもの”と“聞いたもの”を統合して、解釈を行っている。

脳には、専門の感覚を扱う領域が独立して存在しているのではなく、感覚が重複する領域が存在し、異種感覚の間のクロストークを、最大限に利用している。脳は、様々な感覚知覚をブレンドすることによって、周囲の世界から可能な限り多くの意味を引き出している。

ファージの力

ファージ(バクテリオファージ)とは、細菌に感染し、細菌を殺す働きを持つウイルスの総称。一般的に、ファージは細菌に感染し、細菌中で増殖する。増殖したファージは「溶菌酵素」を作り出して細菌をばらばらにし、細菌から飛び出してくる。この溶菌酵素を上手く使えば、細菌感染症の治療に役立つかもしれない。

ファージは、土壌1g 水1ml中に、少なくとも1000万から1億個存在する。実はファージは、地球上で最も数が多い生命体、ということになる(ウイルスが生命かどうか、という議論は別において)。至る所にファージが存在し、至る所で細菌とファージのせめぎ合いが行われている。本文によると、2日ごとに地球上の細菌の半分が、バクテリオファージによって殺されているらしい。

ちなみに、抗生物質は1種類で様々な細菌に効くが、ファージは限られた細菌しか殺さない。その指向性の高さからか、1種類の細菌を殺すためには、複数のファージを組み合わせる必要がある。溶菌酵素に対して耐性を持つ細菌は今のところ見つかっていない、という利点はあるものの、感染症の治療法としての実用化には、まだイノベーションが必要かもしれない。

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