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日経サイエンス 2013年2月

RNAの意外な働きScientists_montage

老化細胞 静かなる反逆者

RNAの意外な働き

ヒトのDNAを構成する30億塩基のうち、タンパク質を構成する遺伝子はわずか1.2%。それ以外は、ジャンクDNAと考えられていた。
しかし、最近の研究によると、このジャンクDNAが重要な機能を持っていることが分かってきた。
ノンコーディングRNAと呼ばれ、遺伝子が発現するタイミングや、合成するタンパク質の量を制御している。
現在では、DNAが機能を果たしている領域は最小で9%、最大で80%と考えられている。

そもそも、DNAがジャンクだらけとはとても思えない。
人間の体は、生存には無駄な部分(親知らず、体毛、虫垂など)があるが、ほとんどの部分は有用である。DNAも同様に、無駄な部分はあるが、ほとんどの部分は有用と考える方が、理にかなっている(DNAを保持するコストが低いとすると、体の器官よりは無駄な割合は多いかもしれない)。
現在無駄と思われている部分、又は実際に機能していない部分も、将来のため(環境変化に適応するため)に必要かもしれない。

老化細胞 静かなる反逆者

細胞が分裂を繰り返していくと、終に分裂能力を失い、「細胞老化」という状態になる。通常は分裂は50回程度で、「ヘイフリック限界」と呼ばれ、これが体全体の老化の原因になっているという考え方がある。
「細胞老化」により、体の老化が進むが、一方、細胞の癌化(制御不能な細胞の増殖)を防いでいるのではないかと考えられていた。しかし最近の研究によると、老化細胞が周囲の細胞に影響を与え、癌化を促進したり、加齢関連疾患を加速しているらしい。
逆に、「細胞老化」を遅らせると、加齢関連疾患の発症を遅らせる事が出来る可能性がある(マウスの実験より)。

ため息をつきたくなる記事。どうやら、老化によって良いことは、(生物学的には)何も無いようだ。
「古きを一掃し、新しきもののための道を作る」ためには良いかもしれないが。