「仕事は楽しいかね?」という題名から、なんとなく「どのように仕事に対するモチベーションを上げるか」「どうやって仕事を楽しんで行うか」ということに関する本だと思っていた。もちろん内容はそれに重なる部分も多いが、どちらかといえば「どのようにしたら成功できるか」ということに重点を置いた本である。
話は、くたびれたサラリーマンの主人公が、成功した大富豪 マックス・エルモアに出会うことから始まる。マックスとの会話が進むにつれ、主人公の失敗の原因、過去の偉人たちが成功した理由、そして、成功するにはどうしたらよいか、ということが徐々にわかってくる。内容はとても分かりやすく書かれており、分量も多くないため、スムーズに読むことが出来る。いくつか面白い考え方があったため、紹介したい。
成功のための戦略
成功のための戦略は、「目標を設定すること」や「生き方を変えること」ではない。なぜなら、目標を設定しても、その目標に向かって一直線に進むことは少ない。また偉大な成功は目標設定からでなく、”単なる偶然”から生まれる。本書では、魚の進化・コカコーラ・リーバイス等を例に挙げ、説明している。
「必要は発明の母かもしれない。だけど、偶然は発明の父なんだ。」
「きみは、最初に陸に上がった魚は長期にわたる目標を持っていたと思うかね?」
ただし、偶然をただ待っているだけではダメで、あらゆる事を行って、成功へのヒントを見逃さないようにする。
「あらゆることをしろ。素晴らしいアイデアは、どこからやってくるかわからないのだから。」
「試してみることに失敗はない」
ホーソーン効果
1924年、電話機の製造工場で、照明と労働者の生産性の関係を調べる研究が行われた。照明を明るくすればするほど、生産性が上がった。この結果は想定内だが、その後照明を元の明るさに戻しても、生産性は落ちなかった。さらに意外な事に、今度は通常よりも照明を暗くしたところ、それでも生産性は上がったのだ。
結果、どのような変化でも生産性を向上させることが分かった。
「あの実験で学ぶべきことはね、あらゆるものを変えて、もう一度変えること、なんだよ。」
大切なこと
・Try & error、とにかく試してみること。
・あらゆるものを変えていくこと。
・あらゆることをして、素晴らしいアイデアを見逃さないこと。
「もし宇宙が信じられないような素晴らしいアイデアをくれるとして、きみはそれにふさわしいかね?」
・右に倣えをしないこと。
「成功するというのはね、右に倣えをしないっていうことなんだ。」
・常に今より良い状態を目指すこと。
「完璧とは、駄目になる過程の第一段階。」
まとめ
本書に書かれている内容は、とても理解しやすい。自分の今までの人生と照らし合わせても、同意できる部分が多い。やや話の流れが唐突で、話題が飛び跳ねる(bounce)箇所もあるが、この本から得るものはたくさんあった。
とにかく、Try & error。たくさん試して、たくさん失敗する。そして、その中から成功を見逃さないようにする。
日本社会は、Tryをつぶす。
検索エンジンをつぶす、ライブドアをつぶす、P2Pをつぶす、
日本社会は、Errorをつぶす。
いかに失敗を減らすか、いかに安全に暮らすか、いかに解雇を減らすか。
そして「失敗を許さない空気」が蔓延している。
日本社会に絶望的に足りない事が、この本には書かれている。
「問題は、才能のあるなしでもなければ、勤勉かどうかってことでもない。コイン投げの達人じゃないってことなんだ。」