イスラエル・イラン軍事衝突の終局について2

ということで、イスラエルの先制攻撃から始まったイスラエル・イラン軍事衝突が唐突に終わった。

流れとしては、

  1. トランプが「イスラエル・イランが停戦合意」と発表
  2. 多少のミサイルの打ち合いはあったが、イスラエル・イランともに停戦を発表

停戦に関して分かったことは、

  • イスラエルの目標は、2. 核開発能力の完全な喪失 だった。
  • そもそも、イスラエル単独で「核開発能力の完全な喪失」は不可能で、アメリカの協力が必要だった。
  • 「核開発能力の完全な喪失」という目標に対しては、イスラエル・アメリカ共にこれ以上の行動は困難(地上侵攻は現実的ではない。空爆もこれ以上の効果は乏しい。MOP(GBU-57)はXの噂によると20発(30発?)しか調達していないらしい。信頼できるかどうかは分からないが、大量に備蓄するような兵器ではないので、20発というのは納得がいく。14発投下して、残りは6発。全て使い果たすような局面ではない)。
  • 攻撃を終了するタイミングとしては理にかなっている。

で、ふと思ったことは、今回の件はイスラエル・アメリカの合同軍事作戦だったのではないか、ということ。

  • 開戦前・開戦後にかけてのトランプの発言の推移が準備周到かつスムーズ。
  • イスラエルの行動に対して、アメリカが右往左往している様子が感じられない(状況に応じて対応する雰囲気が感じられない)。
  • B2爆撃機が本体7機、陽動はそれ以上(9機?)出動。さらに空中給油機が数日前からスタンバイ。これほど大規模な軍事作戦が、数日で立案・準備出来るものなのだろうか。
  • MOP(GBU-57)の在庫20発中14発使用している。「現状できる限りの攻撃を行って、それでオシマイ」という意思を感じる。「数か月攻撃が続くかもしれない、イスラエルの行動によって追加攻撃の可能性もある」と考えるならば、在庫の4分の1とか3分の1とかの使用量に留めて、後に取っておくだろう。
  • 前回の「戦力の逐次投入」とは整合性を欠くが、「いきなりイスラエル・アメリカの合同軍事作戦でイランの核開発を叩き潰す」よりも「相変わらずの鉄砲玉のイスラエルが攻撃を始めて、アメリカが追従、核開発阻止・世界平和というお題目で攻撃して終了」のほうが、国際社会のショックが小さいと判断したのかもしれない。

バンカーバスターと防御について

  • これからせっせとMOP(GBU-57)を追加調達するだろう。
  • 多少の改良はするかもしれないが、爆撃機側の限界ギリギリで設計しているらしく、改良で貫通力2倍とかは難しい。
  • 防御側は、「さらに大深度に施設をつくる」「強化コンクリート」等で対策可能。

イラン側が学んだこと

  • イスラエル・アメリカは、道理も理屈もなくいきなり攻撃してくる。
  • 地上侵攻の可能性は非常に低い。
  • 空軍力では、まるで勝負にならない。
  • 弾道ミサイルはかなり迎撃されるが、1割程度?は突破できる。改良を加えれば、さらに確率を上げられる。
  • 相変わらずモサドの諜報能力はすさまじく、多数の要人が暗殺された。が、核施設の内部破壊はされていない。
  • イスラエル・アメリカの狙いは、イランの核開発能力の喪失だった。逆に言うと、イランの核兵器保有を最も恐れており、核兵器がイランにとって最も安全を保障できる手段である。

よってイランは、「モサドの諜報活動に対処しつつ、大深度に核施設を作り(アメリカ対策)、弾道ミサイルを大量に配備して(イスラエル対策)、IAEAをのらりくらりと躱しつつ、核兵器の保有を実現する」ことがイランの安全を保障する唯一(イスラエルとイランは両立しないので、そうしないと今回のようにいきなりぶん殴られる)で最良(上がりの国になり、アメリカといえど手出しできない)の方法であると考えるようになる、と考える。

イスラエル・イラン軍事衝突の終局について

2025/06/22 アメリカのB2爆撃機がMOP(GBU-57)を投下、イランの地下核施設を爆撃した。6発だか12発だが分からないが・・・

ここまでで分かったことは、

  • アメリカとイスラエルは一心同体で、アメリカ=イスラエル、イスラエル=アメリカと考えたほうが良い。前からそうだけど、再確認。
  • イスラエルはもちろんアメリカも、自国の都合で他国を攻撃する。そこには理屈も(多国間の)国際協調も存在しない。その点において、ロシアや中国と何ら変わりはない。第二次世界大戦以降、人類はまがりなりにも国際協調・法の支配で平和を保つように努力をしてきたはずだが、今回は完全に崩れてしまった。ベトナム戦争・湾岸戦争・アフガニスタン戦争・イラク戦争の方が、まだ理屈・国際協調があった。
  • イラン攻撃の準備は入念に準備されてきた。イスラエル側はもちろん、アメリカ(トランプ)の発言も、攻撃前・攻撃後で微妙にニュアンスを変えてきており、イランに悟られないよう、国際社会から大きく反発されないようにしている雰囲気が感じられる。
  • 数日前から、空中給油機の移動やB2爆撃機の陽動など、入念に準備されていた。これはギリギリまで考えて、本日爆撃を決断したのではなく、前からイラン攻撃は決定事項だったということだ。

MOP(GBU-57)の有効性について

  • 施設として大きな被害を受けたことは間違いないが、核開発を断念するほど致命的なダメージを与えたかについては疑問が残る。
  • イスラエルの攻撃開始から1週間、後生大事にフォルドゥに濃縮ウランを保存しているわけはなく、各地に分散・秘匿しているはず。
  • そもそも岩盤・強化コンクリートで貫通力は大きく落ちるので、主要施設に届く可能性は低い。

戦力の逐次投入について

  • イスラエルが万全の状態で攻撃開始したにもかかわらず、1週間後にアメリカが爆撃している。
  • 最短の時間で最大の効果を期待するならば、開戦と同時にイスラエル・アメリカが共同して攻撃。強固に守られている核施設には、最初からMOP投入。特にフォルドウには複数回、時間差で爆撃するべきだ。
  • 戦力の逐次投入を行っているのは、思いのほかイランの防御が強固で核施設への効果が不十分か、イランの反撃によるイスラエルの被害が想定以上か、という理由が考えられる。
  • が、そもそもイスラエルの空爆でフォルドウの完全破壊は無理と事前に分かっており、なぜ開戦後にアメリカに頼み込んだのか、疑問が残る。

終局について

イスラエルは非常に理性的な国家なので、攻撃開始前に、どこまで目標を達成したら終戦とするか、について考えているはずだ。

どこに目標を置いているか、数通り考えてみた。

  1. イランの軍事力の削減、核開発能力の削減。
  2. 核開発能力の完全な喪失。
  3. イランの政治体制の転覆。
  4. イランの国家としての滅亡。

1ならば、すでに目標は達成している。これ以上戦闘を続ける理由はない。

3は、アフガニスタン戦争・イラク戦争で分かりきっている。体制を転覆しても、結局他国の望むようにはならない。政情が不安定化するだけで、デメリットがメリットを上回る。

4は、イスラエルの安全保障という意味では万全だが、そもそも不可能。アメリカが全面的に参戦しても不可能だし、そこまでするメリットがない。

イランの戦略

上がりの国々

人生ゲームでいうところの、上がり。

北朝鮮、

イスラエル・イランの軍事衝突について

現時点で確かなこと

  • 2025年6月13日、イスラエルがイランに先制攻撃を行った。軍事施設・核施設が空爆を受けた。
  • それに対してイランが報復。ドローン、巡航ミサイル、弾道ミサイルをイスラエルに向けて発射。万全の防空体制のイスラエルがほとんど迎撃したものの、少数の弾道ミサイルがテルアビブに到達し、被害が出ている。

イスラエルの報道規制について

開戦1週間の時点で、イスラエル側の死者は20名ほどと報道されている。

「イラン側と比較して圧倒的に少ない」というのは事実だろうが、それにしても少ない。

攻撃の規模、頻度から、(信頼できない)ネットから入手できる情報から考えても、もっと被害者は多いのではないだろうか。

  • ミサイルが着弾したビルは、ほぼ半壊するほどの被害を受けている。数十名という規模ではない。
  • 他にミサイルの被害を受けた(と報道される)建物は、大使館出張所とか病院とか非常に偏っている。これはイスラエルは公表したいところだけ公表して、他は秘匿しているからではないか(氷山の一角、それとも私のトンデモピアノ調律師推定?)。

「戦争の最初の犠牲者は真実である」ということ。

イスラエルが引かない理由

開戦1週間。イスラエル側から考えると、

  • イランの要人を暗殺した。
  • フォルドゥを除き、核施設に大きなダメージを与えた。
  • イラン空軍にもダメージを与え、航空優勢を確保した。
  • イランの核開発能力、軍事力の回復には数年は要すると思われる。

と、所定の目的を達したように見える。

ここでイスラエルが攻撃の手を緩めていいように思われるが、実際はさらにエスカレーションするように動いている(アメリカへ協力を要請)。

何故だろうか。

ここで、イスラエルが休戦するシナリオを考えてみる。

  1. 一旦和平を結ぶ。
  2. 数年間、得意の諜報戦/情報戦でイランを監視する。
  3. 核開発能力が回復してきたら、何食わぬ顔で先制攻撃する。
  4. 1に戻る。

これはイスラエルが旧来行ってきたことだ(オスロ合意、ゴラン高原etc)。

イスラエルにとっても、これ以上の粗暴な攻撃は国際社会の反感を買うし、戦争ばかりして国力を削いでしまっては元も子もない。

いったん手打ちにしてまた次の攻撃の機会を探る、という方針は良い落とし所に感じる。

しかし現時点(2025/06/20)で、そのような雰囲気は微塵もない。

考えられる原因は、

  • 正常な判断ができないほど、イスラエルが右傾化した(戦闘民族サイヤ人化)。
  • 所定の目的が達成できていない。

くらいだろうか。

正常な判断云々は、よく分からない。そもそも、平和民族ニホン人(の私)からすると、ここ数年のイスラエルの行動は理解不能だ。

イランの核兵器について

イランのドローン、巡航ミサイルは当然のごとく迎撃された。

ここで重要なのは、弾道ミサイル(極超音速?)が目標に達したということである。

いかにイスラエルのミサイル防衛システムが優秀でも、100%迎撃することは出来ない。

現在のイランのミサイルでも突破可能なのだから、飽和攻撃や軌道変化やMIRVなど(防衛側と比較して)小改良を加えるだけで、さらに確率を挙げることができる。

ここで、イランが核兵器を保有し、イスラエルとの全面戦争が勃発した場合を考えると、

  • イスラエルの防空網を突破し、核攻撃を実施することができる。
  • 双方壊滅的な被害が予想されるが、狭い国土に高度な都市を築いているイスラエルと、広い国土に街が散在しているイランとでは、確定的に明らか。

現在、軍事力は圧倒的にイスラエル優位だが、核兵器によりイスラエルとイランが対等の立場になる。

そうなれば、今のようにイスラエルはイランに攻撃できなくなる。

つまり、来年のノーベル平和賞は核兵器に贈られるということだ・・・

弾道ミサイル+核兵器

良いか悪いかという問題は別にして、これ以上強力な組み合わせはない。

核兵器を所持した国には、人類史上最強の国家アメリカでさえ手も足も出ない。