介護/労働比

人口問題:まとめ

少子化高齢化に伴い、医療・介護にかかる社会コスト(経済コスト)が増加していくことは、多くの人が何となく理解できるのではないかと思う。ここでは、少子化高齢化が、どのように経済コストの増加に繋がっていくか、説明したい。

原因から

20代30代のうちは、大抵の人は病気にかかることは少なく、医療機関のお世話になることも少ない。つまり、医療・介護にかかる経済コストは極めて少ない。しかし、40代50代になってくると、高血圧や高脂血症などの生活習慣病で、医療機関を受診することが徐々に多くなってくる。さらに、それ以上になると、癌や脳梗塞などの重篤な病気にかかることが増え、それに費やされる医療費も増えていく。

80代を超えてくると、これらの重篤な病気に加え、身体能力の低下や認知症により、自分一人で生活することがままならなくなってくる(もちろん、90歳でも元気に暮らしている人はいる)。医療費が増加することに加え、介護にかかるコストも急激に増えていく。

このように、高齢化に伴い、医療・介護にかかる経済コストは増加していく。

結果から

平成21年度 医療給付実態調査 概要 より、年齢別一人当たり医療費のグラフを作成した。

前述したように、40代50代から、リニアに医療費が増えていることが分かる。

注:75歳以上は後期高齢者医療制度のデータを、75歳未満は一般の医療保険のデータを使用した。そのため、65歳から74歳の後期高齢者医療制度を利用している人(前期高齢者で障害がある人)のデータは入っていない。70-74歳の医療費に段差があるが、これは上記のデータが入っていないためと考える。
万全を期すならば、これらも勘案する必要があるが、“高齢になればなるほど、医療・介護にかかる経済コストが増加する”ことに大きな影響はないだろう。

次に、年齢別の介護サービス受給者数・受給割合のグラフを下に載せた(厚生労働省のページより転載)。

受給者数は80代でピークアウトしているものの、受給割合は高齢になればなるほど増加している。今後も高齢化が進むに従い、受給者数が増加すること、そして介護サービスに要する費用も増加することは間違いない。

介護/労働比

65歳以上の人口を老年人口というが、今の60代70代は多くの場合、一人で生活できるし、仕事をしている場合も多い。それより上、80歳を超えてくると、身体能力や認知能力が急激に衰えることが多くなる。医療機関に入院したり、介護を受けたりすることも多くなってくる。ここでは、80歳以上を介護人口(医療・介護を主に受ける人口)と呼ぶことにする。

当然、介護人口が多くなれば、医療・介護にかかる経済コストは増加する。しかし、介護人口が多くなっても、それを支える人口も多くなれば、問題はない。ここでは、医療・介護を支える人口、20歳以上65歳未満の人口を、労働人口(医療・介護を主に提供する人口)と呼ぶことにする。

医療・介護にかかる経済コストを考える上で、介護人口と労働人口の比率、つまり介護/労働比が極めて重要になる。介護/労働比が小さければ、(医療・介護において)各々の国民にかかる経済的な負担は小さくなる。逆に、介護/労働比が大きくなると、各々の国民にかかる経済的な負担は大きくなる。

少子化高齢化により、将来的に労働人口(20歳~64歳)は減少し、介護人口(80歳以上)は増加していく。

将来推計人口(出生中位、死亡中位)では、労働人口は2010年の58.5%から、2035年は52.7%、2060年は47.3%と徐々に低下する。一方、介護人口は2010年の6.4%から、2035年は14.5%、2060年は20.1%と増加していく。労働人口が1割ずつの変化であるのに対し、介護人口は2倍3倍という変化である、という点に注意して欲しい。

次に、介護人口と労働人口の比率、介護/労働比の推計をグラフにした。

2010年では0.109、おおよそ10人の労働者で1人の高齢者を支える計算になる。次に、2035年では0.275と、おおよそ4人の労働者で1人の高齢者を支える。次に、2060年では0.425、ざっくり言うと2人の労働者で1人の高齢者を支える必要がある。

年金制度との違い

「10人が1人を支える、4人が1人を支える」と聞くと、年金制度を思い浮かべるかもしれない。年金制度が破綻するかどうかはさておき、介護/労働比の問題は、年金制度よりも重大だと考える。

というのは、年金制度は、いざとなれば年金を減額したり、ガラガラポンしたりすることができる(もちろん、社会に大きな影響が出るが)。しかし、介護/労働比はどうにもならない。重病の人がいれば治療が必要だし、寝たきりの老人がいれば介護をしなければならない。否応なしに降りかかってくる社会コストであり、その点で介護/労働比は極めて重大と考える。

まとめ

医療・介護を主に受ける年齢層(80歳以上)を介護人口、主に提供する年齢層(20歳以上65歳未満)を労働人口とする。医療・介護にかかる社会コスト(各々の国民の負担)は、介護人口と労働人口の比率、つまり介護/労働比と相関する。

介護/労働比は2010年では0.109、2035年は0.275、2060年は0.425と、急激に(そして絶望的に)上昇する。つまり、医療・介護にかかる社会コストは、(現状の医療・介護を維持すると仮定すれば)今後2倍、4倍となる事が予想される。

 

資料:
日本の将来推計人口(平成24年1月推計)出生中位 (死亡中位) 推計
平成22年国勢調査
平成21年度 医療給付実態調査 概要
平成22年度 介護給付費実態調査の概況

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です